SUS317Lとはなんですか?

SUS317Lは、オーステナイト系ステンレス鋼の一種で、SUS317の低炭素バージョンです。**低炭素(L: Low Carbon)**を示す「L」によって、炭素含有量が0.03%以下に抑えられています。これにより、溶接後の耐食性が向上し、特に高温での耐粒界腐食(溶接熱影響部での腐食)が防がれます。

SUS317Lの特徴:

低炭素含有量: 炭素が少ないため、溶接や熱処理後に炭化物が析出するのを抑え、耐粒界腐食に対する耐性が向上します。これにより、溶接後の部品の耐食性が維持されます。

高い耐食性: モリブデン(Mo)を含むため、塩化物による孔食や隙間腐食に対する耐性が高く、SUS316Lよりもさらに優れた耐食性を発揮します。これにより、化学工業や海洋環境での使用に適しています。

耐酸化性: 高温環境下でも酸化に対する耐性があり、長期間の高温曝露でも性能が維持されます。

機械的特性: 高い強度と延性を持ち、加工性や溶接性も良好です。複雑な形状の製品や構造物でも加工が容易です。

主な用途:

化学プラント: 硫酸やリン酸など、腐食性の高い化学物質を扱う設備に適しています。特に、非酸化性酸に対する耐性が高いため、反応器や配管、タンクなどに使用されます。

海洋構造物: 高い耐塩分性により、船舶や海洋プラットフォーム、海洋インフラで使用されます。

食品加工装置: 高い耐食性が求められる食品産業や飲料製造設備に使用されることがあります。

石油・ガス産業: 腐食性の高い環境下で使用されるため、石油精製やガス処理設備、配管に適しています。

SUS317Lは、SUS317の耐食性をベースに、低炭素化によって溶接後の腐食耐性がさらに強化されたステンレス鋼で、特に腐食や高温に強い材料が求められる環境で使用されます。