SUS329J3Lとはなんですか?

SUS329J3Lは、極めて高い強度と優れた耐食性を両立させた特殊なステンレス鋼材で、特に過酷な環境下での使用を目的として開発されました。
分類と「L」の意味
二相ステンレス鋼(デュプレックスステンレス鋼)
SUS329J3Lは、フェライト相とオーステナイト相という2種類の金属組織をほぼ同量(二相構造)で持つステンレス鋼です。このため、「二相ステンレス鋼(Duplex Stainless Steel)」に分類されます。
低炭素(L:Low Carbon)
SUS329J3Lは、ベースとなるSUS329J1のバリエーションです。
末尾の「L」はLow Carbon(低炭素)を意味し、炭素含有量が意図的に低く抑えられています。
利点: 炭素量が低いため、溶接や熱処理を行った際に、腐食の原因となる炭化物が結晶の境界(粒界)に析出しにくくなります。これにより、耐粒界腐食性が大幅に改善され、溶接後の部材の耐食性が向上します。


SUS329J3Lの主な特徴
二相構造を持つSUS329J3Lは、一般的なステンレス鋼(SUS304などのオーステナイト系)よりも優れた特性を多数持っています。

高い耐食性  クロム(Cr)やモリブデン(Mo)などの成分が高いため、オーステナイト系と同等以上の優れた耐食性を持つ。特に塩化物環境や酸性環境に強い。
高強度:通常のオーステナイト系ステンレス鋼(例:SUS304)の約2倍の降伏強度を持つ。フェライト相の特性により高い強度が得られるため、部材の薄肉化が可能になる。
優れた延性:フェライト相がもたらす高強度と、オーステナイト相がもたらす高い延性(ねばり)を併せ持つ。2つの組織がバランスを取るため、破壊に対する抵抗力が強い。
耐応力腐食割れ性:オーステナイト系ステンレス鋼が弱点とする応力腐食割れに対する耐性が極めて良好。フェライト相の存在により、この現象が抑制される。

主な用途
SUS329J3Lは、その強力な耐食性と高強度から、高い信頼性が求められる過酷な環境で広く採用されています。

化学プラント:塩化物や酸を扱う化学反応槽、貯蔵タンク、配管
海洋構造物:船舶、海洋プラットフォーム、海中ポンプなど、塩水環境にさらされる設備
石油・ガス産業:高圧や腐食性の高い流体を扱う石油精製およびガス処理設備
製紙・パルプ産業:腐食性のある薬品を使用するプロセス機器
熱交換器:高温・高圧下での使用が想定される熱交換設備

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